¶ 株式会社の設立の方法

1.株式会社の資本金の形成

 株式会社は、設立に際して株式を発行し、その株式を引き受けた者が株式と引き換えに株式会社に財産を出資することにより、株式会社の資本金が形成されることになります。

 

2.発起人の意義・引受け義務

 発起人とは、「定款」に発起人として署名等をした者のことです。株式会社に設立のために実際の仕事をした者であっても、定款に発起人として署名等した者でなければ発起人となれません。また、株式会社の設立には、1名以上の発起人が必要です。

 

3.発起設立と募集設立

 設立時発行株式は、発起人がその全部を引き受けてもよいし、発起人に一部を引き受け、残りの設立時発行株式について引き受けるものを募集してもよい。

 発起人だけで設立時発行株式を引き受ける設立方法を「発起設立」といい、発起人が一部を引き受け、残りを引き受ける者を募集する設立方法を「募集設立」といいます。

 

注意:発起設立、募集設立のいずれの方法によるかによって、設立手続における個々の手続で異なる点が多くあります。通常は、発起設立を選択します。

 

¶ 定款の作成・認証等

1.定款の作成

 定款とは、株式会社の組織や運営、株主の地位などを定める株式会社の根本原則あるいは、それを記載または記録したものです。株式会社を設立するには、まずは発起人が定款を作成する必要があります。また、最初に作成した定款のことを「原始定款」といいます。

 

2.定款の作成方法

①書面で作成する場合

 定款を書面で作成する場合は、発起人全員がこれに署名し、または記名押印しなければなりません。

②電磁的記録で作成する場合(いわゆる「電子定款」)

 定款を電磁的記録をもって作成する場合は、当該電磁的記録に記録された情報について、法務省令で定める署名または記名押印に代わる措置(つまり電子署名)をとらなければなりません。

 

3.定款の絶対的記載事項

 定款の絶対的記載事項は、会社法27条各号に定められたもの及び発行可能株式総数です。

 

(1)目 的・・どのような事業を目的とする株式会社であるかを明らかにするものです。

(2)商 号・・会社の名称いわゆる社名のことです。

(3)本店所在地・・本店の所在する独立の最小行政区画をいいます。

(4)設立に際して出資される財産の価格またはその最低額・・出資される財産は金銭に限られず、財産的価値のあるものでもよく、下限額はないので、1円と定めることもできます。

(5)発起人の氏名または名称及び住所

(6)発行済株式総数・・株式会社がどれだけの株式を発行することができるかを定めます。

 

注意:設立時役員等の選任は、出資の履行後に選任することもできますが、通常は、定款で定める方法を選択します。(定款による設立時役員等のみなし選任)

 

 

4.定款の認証

 定款は、公証人の認証を受けなければ、その効力を生じません。

定款の認証とは、発起人をして公証人の面前で定款につきその署名または記名押印を自認させ、公証人がその旨をこれに記載することです。また、発起人全員の同意によってする場合など、ある特定の場合の除き、認証定款は、株式会社成立前は変更をすることができません。さらに、認証を受けた定款は、発起人の定めた場所に備え置かなければなりません。なお、株式会社設立後は本店及びその支店で備え置かなければなりません。

 

¶ 出資の履行等

1.出資の履行

(1)金銭出資に係る部分の出資の履行

発起人は、設立時発行株式の引受け後遅滞なく、その引受けた設立時発行株式につき、その出資に係る金銭の全額を払い込まなければなりません。この払い込みは、発起人が定めた銀行等の払い込取扱場所においてしなければなりません。

 

(2)現物出資に係る部分の出資の履行

発起人は、設立時発行株式の引受け後遅滞なく、その引き受けた設立時発行株式につき、その出資に係る金銭以外の財産の全部を給付しなければなりません。ただし、発起人全員の同意があるときには、登記、登録その他権利の設定または移転を第三者に対抗するために必要な行為は、株式会社の成立後にすることができます。

 

注意:現物出資の場合、定款に定めておかなければ、その効力が認められません。(相対的記載事項「変態設立事項」)また、検査役の調査が不要な場合を除き、裁判所が選任した検査役の調査を受けなければなりません。複雑な手続きになりますので、事前にご確認下さい。

 

2.発行可能株式総数の変更等

発行可能株式総数を定款で定めていない場合は、株式会社の成立までに発起人全員の同意によって定めなければなりません。また、定めている場合でも、発起人全員の同意によって定款の変更をすることができます。

 

その後の手続きは下記にようになります。

  • 設立時役員等の選任
  • 設立時取締役等による調査
  • 設立時代表取締役等の選定
  • 設立登記

設立時役員・代表取締役等、「定款」で定めておくことも可能です。実務上の手続きでは、定款で先に定めることが多いです。また、そのほうが添付書類等が少なくなります。